ラグジュアリーブランドの中古品を扱う会員制ECサイトを運営するザ・リアルリアル(THE REALREAL)は人気ラグジュアリーブランドと再販市場におけるトレンド傾向に関するリポートを公開した。同リポートは過去1年間に同サイト内で販売された数百万点のアイテムと購買客から収集したデータに基づいている。
同社は2011年の創業以来目覚ましいスピードで成長しているラグジュアリー2次流通の代表的な存在で、現在はeコマースに加えてニューヨーク・ソーホーなどに3つの実店舗をオープンし、全米11カ所に宝石鑑定士や時計職人など専門家が常駐する委託品受付オフィスを構える。今年6月には株式の新規上場(IPO)を実施し、開始数分で株価がほぼ50%増の29.9ドル(約3169円)まで上昇、時価総額は約25億ドル(約2650億円)となった。
リポートによれば人気トップ10の1位は「グッチ(GUCCI)」、2位は「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」、3位は「シャネル(CHANEL)」。「グッチ」は2位、3位との差を広げ続けているという。ダッドスニーカー“トリプルS(Triple S)”の人気が寄与した「バレンシアガ(BALENCIAGA)」もランクインし、成長率が102%増でトップ10のブランドの中で最も高い成長率を記録。スニーカーがブランドに与える影響は大きく、「ディオール(DIOR)」は同99%増、「フェンディ(FENDI)」は同89%増だった。これら3ブランドの需要が最も大きい層はミレニアル世代だ。
ラティ・レヴェスク(Rati Levesque)=ザ・リアルリアル最高執行責任者は「上位の2ブランドは新鮮な視点のコレクションを提供することで、人口構成が変化するラグジュアリー・ショッパーにうまく順応した。『グッチ』の大胆なマキシマリズムから『ルイ・ヴィトン』のストリートウエアに影響を受けたデザインまで、ミレニアル世代の支持を得る独自性がある」と述べた。
同社のサーシャ・スコーダ(Sasha Skoda)=ウィメンズ・マーチャンダイズ・ディレクターは「ルイ・ヴィトン」が躍進した理由を「より楽しみがあり、独自のプリントをうまく活用している」と語り、ほぼ全てのカテゴリーでトップを占拠する「グッチ」については、「1次流通市場での成長が鈍化しているという情報があるが、再販市場ではまだその傾向は見られていない」と言及した。
18年にフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が退任し、エディ・スリマン(Hedi Slimane)が新たにアーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクターに就任した「セリーヌ(CELINE)」はトップ10から外れており、同氏はエディのファーストコレクションに対する痛烈な反応について言及し「新生『セリーヌ』で何が起こるか人々は見守っている」と語った。また「消費者は次なるビッグブランドを探している。それは『ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)』かもしれないし、最も検索された新興ブランドの一つかもしれない」とも述べた。新興ブランドには「スタウド(STAUD)」や「カイト(KHAITE)」「トーテム(TOTEM)」「レジーナ ピョウ(REJINA PYO)」そして「サンディー リアング(SANDY LIANG)」も挙がっている。
時間が経っても再販価値が落ちないインベストメント・バッグについては、購入価格に対して平均93%で再販される「エルメス(HERMES)」の“ケリー(Kelly)”といったクラシックな定番がけん引。一方で“IT”バッグは平均再販価値が80%から始まり5年目には60%を下回るため、売り手は投資収益率を最大化するために迅速に動く必要があるという。「ラグジュアリーハンドバッグは真に投資対象になるが、スタイルに持続力があるかどうかがリセール市場での価値に劇的な影響を与え得る」とスコーダ=ディレクターは話し、購買客は最終的に再販することを考えて商品を選ぶことに精通しているとも付け加えた。価値が上昇して再販が増えている新たなバッグには「ジャックムス(JACQUEMUS)」の“ル・チキート(Le Chiquito)”や「クロエ(CHLOE)」の“クロエ C(Chloe C)”、「フェンディ」の“モン トレゾール(Mon Tresor)”、「プラダ(PRADA)」の“シドニー(Sidonie)”、「ルイ・ヴィトン」の“ドーフィーヌ(Dauphine)”があるという。
カテゴリーごとのマクロトレンドも明らかになっており、検索数が前年の4.8倍だったストーン付きヘアクリップや4.6倍だったタイダイ柄アパレル、4.5倍だったネオンカラー、2.6倍だったブレザーのほか、カーディガンやシアー素材のアイテム、PVCなどが挙がった。
フランチェスコ・ラガッツィがデザインするイタリア発のラグジュアリー・ストリート・ブランド「パーム・エンジェルス」2019-20年秋冬コレクション MASATO ONODA / WWD (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
ストリートウエアは1次市場で供給に制限を設けたことが再販の急増をもたらし、検索需要の伸びが3.8倍だった。スニーカーとストリートウエアの専門家ショーン・コンウェイ(Sean Conway)氏は「過去1年間で(需要の)大きな上昇が見られた」と語り、ユニセックスの概念と目立つ商品デザインが成長に寄与しているとも述べた。ミレニアル世代やジェネレーションX、女性層からの需要も伸長しており、女性のメンズのストリートウエアの購買率は前年比95%増だった。
同カテゴリーのブランドで成長率が高かったのは前年の27倍だった「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」で、次いで26倍だった「ナイキ×オフ-ホワイト(NIKE X OFF-WHITE)」、10倍の「ベイプ(BAPE)」「オフ-ホワイト(OFF-WHITE)」、6倍の「フィアー オブ ゴッド(FEAR OF GOD)」だった。スニーカーブランドのトップは7倍の「イージー(YEEZY)」で、そこに「プラダ」「バレンシアガ」「ナイキ(NIKE)」「ゴールデン グース(GOLDEN GOOSE)」が続いた。
ストリートウエアのバイヤーのほとんどがラグジュアリー・ブランドでは「グッチ」、次に「プラダ」そして「ルイ・ヴィトン」を買い付ける。ドミニク・ハラス(Dominik Halas)=ザ・リアルリアル メンズウエア・アーカイブ・エキスパートは「ヴィトンはヴァージル・アブローのメンズウエア・アーティスティック・ディレクター就任と素早いドロップで2番手に近づくだろう。イージーが依然として最高位なのは非常に認知度が高く、履くために購入する人々にとってエントリーレベルのスニーカーであるからだ」と語った。
同社はまた環境そしてサステイナビリティーへのファッションの影響も重視されていると述べ、顧客の82%が同社で買い物をする大きな理由にサステイナビリティーを挙げたと指摘した。消費者の93%がサックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)やノードストロム(NORDSTROM)、ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)、ブルーミングデールズ(BLOOMINGDALE’S)といった百貨店で買い物をする一方で、32%はファストファッションからザ・リアルリアルへ移ったと回答したという。
大根田杏(Anzu Oneda):1992年東京生まれ。横浜国立大学在学中にスウェーデンへ1年交換留学、その後「WWD ジャパン」でインターンを経験し、ファッション系PR会社に入社。編集&PRコミュニケーションとして日本企業の海外PR戦略立案や編集・制作、海外ブランドの日本進出サポート、メディア事業の立ち上げ・取材・執筆などを担当。現在はフリーランスでファッション・ビューティ・ライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を行う