レスリー・キーが豪華300人が登場するショートムービーを公開 ユーミンの名曲を採用

レスリー・キーが、2020年の東京オリンピック・パラリンピック応援メッセージ企画の一環として、自身が監督した2本のショートムービーを公開した。ユーミンこと松任谷由実の名曲「やさしさに包まれたなら」が流れる中で、バージョン1では日本を代表するダンサーとして海外でも活躍するアヤバンビ(AYABAMBI)からスタートし、黒木メイサや斎藤工、壇蜜や、空手の胴着を着た岩城滉一、和服姿の藤原紀香、上半身裸のサッカーの槙野智章選手、再婚で話題の藤あや子や五木ひろし、ジャルジャルなど、スポーツ選手や人気のモデル、俳優、お笑い、演歌歌手、歌舞伎役者まで幅広く起用。森永邦彦「アンリアレイジ」デザイナーや国立競技場をデザインした隈研吾も登場する。バージョン2ではローラからスタートし、荻野いづみ「アンテプリマ」クリエイティブ・ディレクターや丸山敬太「ケイタマルヤマ」デザイナー、松本伊代、林真理子、八代亜紀、吉木りさなどが顔をそろえ、ユーミンがトリを飾っている。

これは、NHKが企画・制作する 「2020レスリー・キーがつなぐポートレートメッセージ」の一環で、東京2020を応援するために、各界で活躍する人に夢や目標をボードに書いてもらい、レスリーが写真と映像を撮影するというプロジェクトの一環だ。すでに著名人350人と一般人650人を撮影し、NHKのホームページで写真を公開中。今回のムービーには著名人300人が登場する。

レスリーは、このプロジェクトについて「NHKの局長から昨秋に依頼があり、運命的な企画だなと思って協力することを決めた。私は東日本大震災の後、日本の人々を少しでも元気にしたいと思って『スーパースター』のテーマで300人のアーティストを撮影した。今回はみんなが2020年の東京オリンピック・パラリンピックを祝い、喜び、盛り上げる企画だけれど、人々とともに作り上げ、共感し、感動する部分は一緒だなと思ったし、僕はこういう企画に向いているなと思う。ずっと自分がやりたいこと、信じていることをやり続けてきてよかったなと思った。日本に来て23年目、ちょうど人生の半分を日本で過ごしてきたことになる。日本中が夢を見る大事なイベントであり、スポーツ選手だけでなく、ファッションもアートも経済にとっても大きなチャンスに立ち合い、この企画が担当できて幸せ。あらためて日本に来てよかったと実感している」と思い入れを語る。

300人の撮影は、わずか3日間で行われたもの。「1人当たりはすごく短い時間だったけれども、いい時間を一緒に過ごして、楽しみながら、素敵なメッセージを一緒に仕込んでいけたらという気持ちで撮影に臨んだ。今回のテーマは『夢』『奇跡』『メッセージ』の3つだ。選手たちは大きな夢を持ち、人々の期待を背負い、プライドを持って世界と戦うのだから、夢と希望はとても大切。だから、色紙という、とても日本らしくて美しいものに、自分の夢や目標を書いてもらった。オリンピックだから五輪カラーの5色から選んでもらい、5秒でどう自分を表現するのかに挑戦してもらった。そして、一人ひとりの個性が出るように、全身なのか顔のアップなのか、笑顔なのか真顔なのか、キックなのかダンスなのか静止しているのかなど動きや構図を一緒に考えていった」と舞台裏を明かす。

豪華出演者のキャスティングについては、「老若男女、各ジャンルで日本を代表するような人々を幅広くラインアップしたいと思い、鈴木福くんから、湯川玲子さんまで登場してもらった。8割は自分が付き合いがあるアーティストで、遊びに来る気持ちで参加してもらった。僕の仕事では、女優さんや俳優さん、アーティストやモデルなどは多いけれども、建築家や同じフォトグラファー、脚本家などの方々とはあまり接点がなかった。だから今回はこれを機に、繰上和美さんや隈研吾さん、小山訓堂さんなど、僕が憧れている先輩や後輩で、各分野で活躍し、時代を超えてその存在や作品が生き残る、タイムレスな人々にもお願いして撮影させていただいた。

起用した曲は、ユーミンの「やさしさに包まれたなら」だ。10代の頃からユーミンに憧れ、近年ではジャケットや写真集などを撮影して交流があるレスリーだが、今回、この曲に改めて出会ったのは偶然だという。「われわれアートの仕事でも、表現者との仕事はタイミングや出会い、経験も大事だが、ラック(幸運)や奇跡も大切だ。今回のテーマとして『夢』『奇跡』『メッセージ』を掲げたので、その3ワードをネット検索してみたら、この曲一番最初に出てきた。ホント、運命的だし、この企画にピッタリの曲だと思った。ユーミンは13歳からずっと聞いている、自分の心の中に息づいている大好きなアーティストで、『やさしさに包まれたなら』は本当に大切な曲。もうこれしかないと、ユーミンと松任谷正隆さんに直接話をして提供をお願いした。

フォトグラファーとしてのイメージが強いレスリーだが、一昨年から映像にも挑戦し始めている。「15年5月に河瀨直美監督にカンヌ映画祭に連れて行ってもらったこと。たくさんの映像監督たちに会ったが、映像と写真は表現方法も表現できることも異なりながらも、世の中にメッセージを伝えられると感じて、映像も始めた。最近は、『H&M』のゴールデンウィーク企画で柴咲コウや、若いインフルエンサーたちの映像も撮った。映像作家としてはまだ2年目だが、自分のステップアップにもつなげていきたいと思う。YouTubeにも上げたので、気軽に映像を見て、元気をもらい、夢や希望を抱いてもらえたら」。

「ルイ・ヴィトン」がブロックチェーン技術を導入 消費者は商品の製造工程や真贋の確認が可能に

LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、原材料が調達された国や製造工程などの記録を消費者が追跡でき、製品が本物かどうかも確認できるプラットフォームを導入する。

同社は、マイクロソフト(MICROSOFT)と米ブロックチェーン開発企業のコンセンシス(CONSENSYS)と提携し、イーサリアム(ETHEREUM)のブロックチェーン技術とマイクロソフトのクラウドコンピューティングを活用した「オーラ(AURA)」というプラットフォームを発表した。ラグジュアリーブランドでは初となる試みで、まず傘下ブランドの「ルイ・ヴィトン」とパルファン・クリスチャン・ディオール(PARFUMS CHRISTIAN DIOR)で導入し、順次拡大していく。将来的には、他社のラグジュアリーブランドにも普及させていきたい考えだ。

「オーラ」を利用すると、原材料の調達から店頭に並ぶまでの各ステップで、さまざまな情報が複製不可能な状態でブロックチェーン上に記録される。それらの情報を含むQRコードを製品に付けることで、消費者はブランドのアプリを使ってそれを確認できるという仕組みだ。LVMHは、「ブロックチェーン上において情報は分散的に保存され、変更不可能だ。消費者は、透明性の高い情報に基づいてより倫理的な製品を選ぶことが可能になる」と説明する。

また「オーラ」では製品が最初にどこで購入され、いつリセールに出されたのかなどの情報も提供されるため、グレーマーケットにも光を当てることになるだろう。近年、ラグジュアリー製品のECや二次流通市場の隆盛とともに、模造品や盗品の流通、詐欺などの問題が増加している。そうした中、「オーラ」を利用することで、いわば製品の“身元”をデジタル上で証明できるようになる。こうした技術を利用し、LVMHは近い将来、「ルイ・ヴィトン」の全製品を正規品として認定するという。

フランスの暗号化テクノロジー企業アリアニー(ARIANEE)のフレデリック・モンタニョン(Frederic Montagnon)会長は、「デジタル化を推進する企業や個人にとって、プライバシーやサイバーセキュリティーの確保は非常に重要な問題だ。ユーザー側が情報を管理できるようにすると同時に、情報漏えいを防げるよう、情報システムの設計を考え直すべき時がきた」とコメントした。

なお、「ルイ・ヴィトン」はデジタルテクノロジーを別の方向でも活用しており、柔軟性のあるデジタルスクリーンをはめ込んだバッグを5月8日に開催した2020年プレ・スプリング・コレクションのショーで発表している。

「トーガ」19-20年秋冬はエレガンスとカジュアルのせめぎ合い テーラードジャケットやフェザーがカギ

「トーガ(TOGA)」は、ロンドン・ファッション・ウイークで2019-20年秋冬物を発表した。会場に選んだのは、地域住民向けのレジャーセンターという体育館。サイクリングパンツが登場した前シーズンに続き、会場選びからして今季もスポーツムード全開かと思いきや、出てきたルックはぐっとシックな印象だ。この間トレンドとしてストリートスタイルが続いていたが、エレガンスへの回帰はここにきて決定的。ただし、カジュアルに慣れた身には直球のエレガンスはハードルが高い。その点からいって、「トーガ」のエレガンスのハズシ方は参考になるポイントが豊富だ。

冒頭は、オーバーサイズのテーラードジャケットを主役にしたスタイル。幅の太いピークトラペルをポイントにした正統派ジャケットに、長靴風のニーハイブーツやモダンアートのようなブローチを合わせてポイントにする。ジャケットにスラックスを合わせた王道のマニッシュルックは、ウエストベルトからチェーンで吊ったサイハイブーツやランジェリーのチラ見せといった要素で遊びを加える。全体的に、ボトムの丈が短くなって、軽快な雰囲気が強まっているのも特徴だ。

ゴージャスなフェザー使いも今季のポイント。フェザーとオーガンジーを組み合わせたブラウスは、あえてサスペンダーパンツと合わせてカジュアルダウンする。フェザーを飾ったテーラードジャケットは、ウールではなくダイバースーツに使うような素材感。ブーツやギャザーシューズはポインテッドトーのきれいめな印象ながら、スニーカーソール製。そんな風に、そこかしこにエレガンスとカジュアルのせめぎ合いがある。

最先端サステイナブル素材はパイナップルやオレンジ由来 2人のキーパーソンに新コレクションを聞く

「H&M」は、サステイナブル素材を駆使したハイエンド・コレクション“コンシャス・エクスクルーシブ(CONSCIOUSEXCLUSIVE)”の新作を4月11日に発売する。9回目となる2019年春夏のインスピレーション源は、“自然の美しさと癒しの力”。レッドカーペットでも着用できることを掲げるコレクションらしくスパンコールやラッフルをあしらったドラマチックなイブニングドレスや、テンセルとオーガニックリネンを用いたテーラードセットアップをはじめ、リヨセルや再生ポリエステル製のよりカジュアルなプリントアイテムまでをそろえる。さらに、再生プラスチックや再生シルバーと半貴石を組み合わせたジュエリーや、再生ポリエステル製の水着などもラインアップ。植物やミネラルなど自然界の優しい色味を基調にした、リラックスムードを感じるコレクションに仕上がっている。

同コレクションの最大の特徴は最先端のサステイナブル素材を積極的に取り入れていることで、これまで海洋に投棄されたプラスチックを原料にした再生ポリエステル「バイオニック(Bionic)」や漁業網などのナイロン廃棄物を100%再生した「エコニール(Econyl)」などをフィーチャーしてきた。今シーズンは新たな素材として、パイナップルの葉から取り出したセルロース繊維で作られた天然皮革の代替素材「ピニャテックス(Pinatex)」、柑橘系ジュース類の副産物をリサイクルしたシルクのような質感の「オレンジファイバー(OrangeFiber)」、植物由来で柔軟性のある発泡素材「ブルームフォーム(BLOOMForm)」を採用している。

また、今回は発売に先駆けて、4月6日に日本初のポップアップストアを東京・南青山のラコレッツィオーネに1日限定でオープン。会場では、同コレクションを販売するほか、オーガニックコットンや再生ポリエステルなどベーシックなサステイナブル素材のみを使った“コンシャス・コレクション(CONSCIOUSCOLLECTION)”のウィメンズとキッズアイテムもそろえる。

1月末にドイツ・ベルリンで開催された“コンシャス・エクスクルーシブ”発表イベントに登壇したアン・ソフィー・ヨハンソン(AnnSofieJohansson)=クリエイティブ・アドバイザーとセシリア・ブランステン(CeciliaBransten)環境サステイナビリティー統括責任者に、コレクションの製作背景からサステイナビリティーに関する取り組みの現状までを聞いた。

まず、イベントをベルリンで開催した理由は?

ベルリンは、ボヘミアンな街でアートやクリエイティブ・シーンも活発。なので、今回のコレクションのコンセプトにぴったりだと思いました。

2012年にスタートし、9回目になる“コンシャス・エクスクルーシブ”だが、今回はよりカジュアルな印象を受けた。今シーズンのポイントは?

今回は確かにカジュアルなアイテムが多いですが、ただ「カジュアル」というよりも「ボヘミアン」という表現がふさわしいかもしれません。ロサンゼルスの雰囲気をほうふつとさせるリラックススタイルが特徴です。しかし、“コンシャス・エクスクルーシブ”のDNAは最初から一貫して変わらず、特別な日にドレスアップできるアイテムをそろえるとともに、毎回最先端のサステイナブル素材を採用しています。

イナップルの葉から作られたレザーの代替素材など今回もユニークな素材使いが目を引く。新たに採用した素材について教えてほしい。

セシリア・ブランステン「H&M」環境サステイナビリティー統括責任者(以下、ブランステン):革新的な天然繊維の「ピニャテックス」は、収穫の際の廃棄物だった葉の部分を天然皮革の優れた代替品として生まれ変わらせたもの。今までは行きどころのなかったものを無駄なく再利用して、レザーのような素材を作り出すことができました。今回発表したジャケット一着には、およそ16kgのパイナップルの葉が使われています。また、オレンジファイバーに関しては、H&Mファンデーション(H&MFOUNDATION)が主催する第1回「グローバル・チェンジ・アワード(GlobalChangeAward)」(循環型のファッション業界を実現するための革新的なアイデアを競うコンペティション)で受賞したアイデアです。このアワードから生まれた素材を使えることは、非常にうれしいですね。そして、「ブルームフォーム」は、(藻類の大量発生による有害な水の着色現象である)藻類ブルームを引き起こす可能性の高い淡水域から集めた藻類バイオマスを使用した、植物由来の柔軟性のある発泡素材です。今回はサンダルのソールに使用されていますが、靴のソールの代替品はなかなか他にないので、今後の広がりをかなり期待できるのではないかと感じています。

昨年には初の秋冬コレクションを発表した。今後も春夏だけでなく秋冬を提案していく予定か?

次回の新素材についてはまだお伝えできませんが、もちろん全く新しいものを使用したコレクションを提案する予定です。もしかしたら、素材ではなく、染色やプリントなど生産工程にフォーカスしたものになるかもしれません。いずれにしても、包括的によりサステイナブルなものになります。年々、私たちが使用してきたサステイナブル素材のリストは増えています。例えば、昨年の秋冬コレクションではベルベットを採用。ただし、開発期間は2年にも及びました。新素材の開発は本当に時間がかかるため、サプライヤーと密に連携をとる必要があるのです。

現在は素材へのフォーカスが中心だが、今後は生産工程に関しても最先端のサステイナブルな方法を取り入れていくということか?

「H&M」では生産工程において化学薬品の使用に関する厳しい規制が設けられていたりとさまざまなことに取り組んでいて、現状でも可能な限りサステイナブルであるように努めていると言えます。今後は「ドライダイ(Drydye)」など水を使わない染色方法にもチャレンジしてみたいと思っていますし、大量の水を必要とするプリントの工程においても他の可能性を探る必要があると考えています。なので、素材だけでなくサステイナブルな生産工程をフォーカスすることも、今後のコレクションでは視野に入れていく予定です。

今シーズンはウィメンズのみの提案だが、メンズやキッズにも取り組む予定は?

そうですね。コレクションのテーマやコンセプトにフィットするようであれば、また是非発表したいですね。キッズに関してはWWFとのコラボレーションや通常のコレクションなどでも積極的にサステイナブルなアイテムを手掛けていますし、メンズもニーズを感じているので、必ず取り組んでいきたいと考えています。

中で“コンシャス・エクスクルーシブ”が担う役割とは?

“コンシャス・エクスクルーシブ”の良いところは、「H&M」が取り組んでいるサステイナブル・ファッションへの理解や認知を高めることができる点です。持続可能なファッションに関心を持つ人とのつながりを深めることはとても重要だと考えていますし、サステイナブル・ファッションが“ファッション”として成り立つことを知っていただくのは非常に大切です。サステイナブルな商品を発売しても、誰も着用しなかったら結果的にサステイナブルではありませんよね。なので、サステイナブル・ファッションであっても“ファッション”が何よりも重要な要素であり、最優先されるべきだと考えています。

“2030年までに全ての商品をサステイナブルまたはリサイクル素材に切り替えること”を目指しているが、それは「H&M」のみか?それとも、グループ全体か?

「H&M」だけでなく「コス(COS)」や「&アザーストーリーズ(&OTHERSTORIES)」などH&Mグループの全ブランドにおいて実現する計画で、そこには「H&Mホーム(H&MHOME)」も含まれます。

すでに全素材のうち57%がサステイナブルまたはリサイクル素材になっています。“2020年までに100%のコットンをリサイクルまたはサステイナブル・コットンに切り替える”という目標も掲げているのですが、これについては現時点ですでに95%を達成しています。

通常のコレクションでも、かなりサステイナブル素材への移行が進んでいるということだが、逆にどういった点で“コンシャス・エクスクルーシブ”は異なるのか?

はい、「H&M」では全商品においてサステイナビリティーを意識しています。ですが、“コンシャス・エクスクルーシブ”ではパイナップルの葉やオレンジの皮に由来する繊維など最新のサステイナブル素材を採用していて、サステイナビリティーという視点でさらに一歩先を行くコレクションになります。通常のコレクションには最先端の素材は使われませんから。これらの新素材は、いずれ規模が拡大して通常の商品にも使われるようになるかもしれませんが、現在のところは“コンシャス・エクスクルーシブ”で実験的に使い、素材の可能性やお客さまの反応を見ています。なので、新素材を実験的に使用することが、このコレクションの大きな特徴ともいえます。そして、ここから得た知識や経験を生かして、最終的には通常のコレクションにも使えたらと考えています。

実際のところ、テンセルは“コンシャス・エクスクルーシブ”でまず採用し、そこから通常の商品にも使われるようになりました。再生ポリエステルも同様で、今や世界最大規模のユーザーになっています。もしかしたら、次は「オレンジファイバー」や「ブルームフォーム」でそれを実現できるかもしれませんね。

今後あらゆる商品にサステイナブルな素材を用いることになると、商品の価格帯は変わる?

それはありません。“コンシャス・エクスクルーシブ”に関しては、特別な新素材を取り入れているため、高めの価格帯に設定されています。一方、通常のコレクションに関しては幅広い商品をラインアップしているため、価格の低いものから高いものまでがあります。例えば、ドレスなど特別な日に着用できるようなアイテムは高価格帯に設定されていますが、Tシャツやパンツなどベーシックなものに関してはロープライスです。今後も全体の仕組みは変わることはなく、サステイナブル素材が取り入れられるために全体の価格が上がることはありません。サステイナブルな商品は、一部の人だけのものではなく、全ての人の手に届くものでなければならないと考えています。

H&Mのような大企業がサステイナビリティーに対する取り組みを行うことの意義をどのように考えているか?

非常に重要です。大企業として大きな責任があるのはもちろんですが、それと同時にファッション業界に大きなインパクトを与えて抜本的な変化を起こすことができる可能性を秘めています。そういう意味では、大きなチャンスと言えるでしょう。

そうですね。真の変化を起こしたい時、それを実現させるために多くの人にリアルにリーチできるH&Mの世界的な規模は有益だと思います。

近年、消費者のサステイナビリティーへの意識も高まっているように感じるが、この変化をどのように受け止めているか?

まさに世の中のサステイナビリティーへの意識は高まっています。特に若い世代の間で浸透しているようで、彼らは洋服がどこでどのように作られたかに高い関心を持っているのです。私がH&Mに入社した1980年代を振り返ってみると本当に大きな変化ですが、私たちは正しい方向に進んでいると思います。今後、(世界の人口が増える一方で資源は減っていく中で)これまでと同じようにビジネスを継続することは難しくなります。そのため、新しい方法を見つける必要があり、ファッションの循環型アプローチが重要になります。すなわち、REWEAR(再着用)、REUSE(再利用)、そしてRECYCLE(リサイクル)が唯一の手段であり、私たちが前進する鍵になるのです。もちろん私たちはファッションを愛し続けますが、そのうえで将来的に全てのものがサステイナブルになることを目指しています。ファッションとサステイナビリティーは、もっともっと密接な関係であるべきだと考えています。

多くの人が責任感を持って、サステイナブルな選択と決断をし始めていることは、とても素敵なことです。そして、サステイナビリティーへの意識を持っている消費者が、私たちにアクションを起こさせることもあります。例えば、“コンシャス・エクスクルーシブ”では、生産工程の透明性を示すためにオンラインで生産国や工場、従業員、原材料を紹介しています。また、われわれは“2030年までに、100%の素材をサステイナブルまたはリサイクル素材に切り替えること”以外にも、“2020年までに2万トンの古着を回収すること”や“2040年までにクライメット・ポジティブになること”を目標に掲げています。短期的ではなく長期的なゴールを設定し、それに向かって取り組んでいくことが大切です。

1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース個人」のオーサーも務める。