「ルイ・ヴィトン」がブロックチェーン技術を導入 消費者は商品の製造工程や真贋の確認が可能に
LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、原材料が調達された国や製造工程などの記録を消費者が追跡でき、製品が本物かどうかも確認できるプラットフォームを導入する。
同社は、マイクロソフト(MICROSOFT)と米ブロックチェーン開発企業のコンセンシス(CONSENSYS)と提携し、イーサリアム(ETHEREUM)のブロックチェーン技術とマイクロソフトのクラウドコンピューティングを活用した「オーラ(AURA)」というプラットフォームを発表した。ラグジュアリーブランドでは初となる試みで、まず傘下ブランドの「ルイ・ヴィトン」とパルファン・クリスチャン・ディオール(PARFUMS CHRISTIAN DIOR)で導入し、順次拡大していく。将来的には、他社のラグジュアリーブランドにも普及させていきたい考えだ。
「オーラ」を利用すると、原材料の調達から店頭に並ぶまでの各ステップで、さまざまな情報が複製不可能な状態でブロックチェーン上に記録される。それらの情報を含むQRコードを製品に付けることで、消費者はブランドのアプリを使ってそれを確認できるという仕組みだ。LVMHは、「ブロックチェーン上において情報は分散的に保存され、変更不可能だ。消費者は、透明性の高い情報に基づいてより倫理的な製品を選ぶことが可能になる」と説明する。
また「オーラ」では製品が最初にどこで購入され、いつリセールに出されたのかなどの情報も提供されるため、グレーマーケットにも光を当てることになるだろう。近年、ラグジュアリー製品のECや二次流通市場の隆盛とともに、模造品や盗品の流通、詐欺などの問題が増加している。そうした中、「オーラ」を利用することで、いわば製品の“身元”をデジタル上で証明できるようになる。こうした技術を利用し、LVMHは近い将来、「ルイ・ヴィトン」の全製品を正規品として認定するという。
フランスの暗号化テクノロジー企業アリアニー(ARIANEE)のフレデリック・モンタニョン(Frederic Montagnon)会長は、「デジタル化を推進する企業や個人にとって、プライバシーやサイバーセキュリティーの確保は非常に重要な問題だ。ユーザー側が情報を管理できるようにすると同時に、情報漏えいを防げるよう、情報システムの設計を考え直すべき時がきた」とコメントした。
なお、「ルイ・ヴィトン」はデジタルテクノロジーを別の方向でも活用しており、柔軟性のあるデジタルスクリーンをはめ込んだバッグを5月8日に開催した2020年プレ・スプリング・コレクションのショーで発表している。